総本家 駿河屋善右衛門と菓子の話

総本家駿河屋の商品が完成するまでの開発秘話や、おすすめのお菓子について、
和歌山の見所など幅広くご紹介します。

2017.02.09菓子づくりの信念を、「本」の字に託して

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「本」という焼き印が押された酒饅頭、「本ノ字饅頭」は、総本家駿河屋の看板菓子の一つです。江戸時代には参勤交代の携行食としても重宝され、「紀伊國名所図会」という和歌山の名所案内で名物として紹介されているように、地域を代表する菓子でもあります。
当時から変わらぬ製法は、いたって素朴。麹ともち米を混ぜて発酵させたもち生地に小麦粉を混ぜ、餡を包んで寝かせた後、せいろで蒸す。ふっくらと蒸し上がった饅頭に、本の字を焼き付ければでき上がり。
一見すると、どこでもつくれそうなほど簡単に思えますが、しかし、どこでもつくれる菓子ではありません。本ノ字饅頭の変わらぬおいしさの秘密は、和歌山の同じ地でつくり続けるからこそ。饅頭の仕上がりを左右する米麹は繊細なため、せいろを動かして刺激しないよう、同じ工場でしかつくれないのです。一度食べれば「和歌山の味」として、忘れられないといわれるおいしさは、単純だからこそ、職人のこだわりによっ
て支えられています。
饅頭を象徴している「本」の一文字は、紀州徳川家が領民に説いた「正直を本とす」という教えに由来するもの。自らの仕事へ、ただひたむきに向き合う精神で、まっすぐに菓子のおいしさを追求し続ける。そんな想いを乗せた、本ノ字饅頭なのです。