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クリスマスに新たな彩りを添える創作生菓子

私ども総本家駿河屋は室町時代に始まり、先代から受け継がれてきた歴史と伝統とともに、皆さまに愛され支えられてまいりました。

時代を経ても輝きを失わない定番の味わいも、
新しい時代と共に進化していく革新的な味わいも、

長年にわたって切磋琢磨しながら手を取り合ってきた『人』の想いが込められています。

今回は、歳末の一大イベント『クリスマス』にまつわる生菓子をご紹介します。

クリスマス文化と日本

まずは簡単にクリスマスについておさらいしましょう。

クリスマスは、イエス・キリストの誕生日と認識している方も多いでしょうが、実はキリストの誕生日には諸説があり、現在も特定されていません。
正しくは“キリストが誕生したことを祝う日”であり、キリストや周りの大切な人にプレゼントを送り、楽しく幸せな時間を過ごすための一日です。

また、クリスマスといえばサンタクロースですが、その起源は、4世紀頃の小アジア(現在のトルコ)に実在し、貧しい人々や子どもたちを救った聖人ニコラオス(Saint Nicholas)がモデルだと言われています。
ニコラオスが貧しい家を救うため真夜中に訪れ、窓から金貨を投げ入れると、暖炉に干していた靴下の中に偶然入ったという逸話から、サンタクロースの伝承が生まれたそうです。
後年、この伝承がカトリック教会によってクリスマスのお祝いと結び付けられました。

クリスマスの文化が日本に入ってきたのは、宣教師フランシスコ・ザビエルが日本に上陸した天文18(1549)年頃。
その後、鎖国で一旦禁教令が発布されますが、明治6(1873)年にキリシタン放還令でクリスマスがようやく解禁し、じょじょにキリスト教信者ではない日本の一般家庭にもクリスマスが浸透していったそうです。

明治43(1910)年には、ついに日本独自の文化である、クリスマスケーキが登場。
それからは、子どもたちにとって、クリスマスケーキが食べられて、サンタからプレゼントももらえる楽しいイベントデーとして定着します。

そして日本のクリスマスは、時代の変化とともに新たなスタイルを取り入れていきます。
大人たちにとっては、家族や仲間とパーティーで盛り上がれる一日。
恋人たちにとっては、2人だけで過ごす大切な一日。

フライドチキンを食べるなど、今後も新たなクリスマスのスタイルが生まれる可能性が高い中、クリスマスケーキとは異なる定番を打ち立てようと、各和菓子屋も様々なアイディアを出し始めました。

クリスマスのシンボルを具現化した生菓子

フランスの『ブッシュ・ド・ノエル』、イギリスの『クリスマスプディング』など国を象徴するクリスマスの定番菓子がある中、日本らしさとクリスマスを調和させるものとして考えられたのは生菓子による創作和菓子でした。

総本家駿河屋でも平成に入った頃には、クリスマス生菓子の創作をスタート。
最初の商品は、緑に色付けした金団で表現したクリスマスツリーの生菓子でした。
その後も様々な材料を用いて生菓子の形状などを模索。
日本のクリスマス同様に新たなスタイルを常に取り入れて今も進化させています。

今年のクリスマス生菓子は2種類(4アイテム)をラインナップしました。

1つ目は、写真右。定番となったクリスマスツリーの金団、餅生地で白餡をくるんだ赤鼻のトナカイ、雪の結晶の焼き印をあしらった薯蕷饅頭の『クリスマス生菓子』3種セットです。

3種の中でクリスマスツリーは特に手の込んだもので、仕上げるには熟練した職人の技が必要不可欠。
芯となるつぶ餡に、緑に色付けした水飴入りの白餡を飾り付けていくのですが、実は餡に餡を付ける作業は、部位によってくっつきにくいところもあればくっつき過ぎるところもあるため、作業の手間が通常の生菓子の倍はかかります。
箸を巧みに操って葉の形を施した後は、別の菓子職人にバトンタッチ。バランスを考慮しながら、玉あられや煉りきりで作った飾り、雪に見立てた氷餅をデコレーションし、チームワークで仕上げていくのです。

2つ目は写真左の、大小の薯蕷饅頭を重ねて表現した雪だるま『雪の精』
通常、薯蕷饅頭の餡は黒っぽい餡ですが、雪と同様に中まで真っ白にするため、特別に白餡を入れています。
帽子とマフラーは羊羹を加工したもの。雪だるまの表情は焼き印や羊羹などで細工していますが、実はこの表情も以前に作ったものとはかなり違います。
創作当初は凛々しい表情だったものが、女性スタッフやお客様の声を取り入れて、頬を赤らめたり、目鼻の形や大きさを調節したりして、可愛らしさと柔らかさを強調した表情になるよう調整を重ね続けているのです。

創作生菓子は、味と佇まいを守り続ける伝統菓子と異なり、流行に応じた変化を常に取り入れられるため、職人にとっても刺激的で挑戦心を掻き立てられるもの。
今年も、とびきり愛らしいクリスマス生菓子に仕上げようと、職人たちが様々な思案を巡らせています。

令和初のクリスマスは、ぜひ総本家駿河屋のクリスマス和菓子で、心とおなかをほっこり満たしてください。
定番のクリスマスケーキとは違った、見た目の楽しさと落ち着いた甘さを堪能していただけると思います。

(※2商品とも12/23~25の3日間限定販売です。)

 

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